
この度、ロンドンのユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(University College London:略称UCL)に留学中の木本梨絵(きもと りえ)さんに、弊社インタビューにご協力いただきました。
木本さんは、株式会社HARKEN代表・クリエイティブディレクターとして活躍しながら、ユニバーシティー・カレッジ・ロンドンで人類学の修士課程に在籍しています。
仕事と学業の両立を実現している木本さんですが、「なぜ30歳という節目で留学を決意したのか」、また「なぜ留学先にイギリスを選んだのか」、「イギリスでの暮らしや留学費用の現状」などについて詳しくお答えいただきました。
海外留学を検討する誰もが気になるリアルが詰まった内容なので、ぜひ参考にしてみてください。
(※本インタビューは、英語で実施した内容を日本語に翻訳・編集しています。)
留学を決意した理由と背景
海外留学への憧れは、常に心のどこかにありました。武蔵野美術大学に通っていた頃から、イギリスやアメリカへの留学に憧れていましたが、留学に行く勇気が出ないまま、日々の生活に追われるばかりで。
美大卒業後は飲食店の店舗スタッフとして新卒で働きつつも、「もしあのとき留学していたらどんな人生だっただろう…」と常々考えていました。きっと英語も話せて、海外で生活を送っていたのではないか…そんな思いが頭をよぎっては消し、という日々でした。
そんな折、30歳の頃に離婚を経験。東京に住む理由の一つを失って、「これは今後の人生について見つめ直し、諦めていた夢に挑戦する最後のチャンスかもしれない」と感じ始めたんです。
そんなタイミングでひとり北欧の旅へ。当時、英語がほとんど喋れなかったにも関わらず、翻訳アプリを駆使して仲良くなったノルウェー人やフランス人の知人たちと3日間、森で一緒に過ごす機会に恵まれました。裸足で駆け回り、お腹が空いたら野いちごやキノコを食べ、時には裸で川を泳いで…。

ノルウェーの森での様子
そういった時間を通じて人生ではじめて、拙い英語を通して日本の文化と他国の文化を比較するという経験をし、これまで抱いていた一辺倒な価値観に疑問を抱きはじめたんです。ひとつの場所に留まって、一つの文化、一つの言語に触れているだけでは、それらを相対的に比較する術がなく、偏った一つの側面しか見ることができないと思いました。日本人として日本の文化をより深く理解するためには、異文化を理解することが不可欠なんだと気付いた瞬間です。
その旅の過程で立ち寄ったコペンハーゲンのレストランで、ひとりハンバーガーを頬張りながら「やっぱり留学に行きたい、旅の気づきは単なる思い出でなく、学問としてきちんと消化したい……」と思い立ち、旅の最中に途端、大学探し。

留学を思い立ったコペンハーゲン
留学先をイギリスにした理由
人類学に興味を持ったきっかけは、先ほどのノルウェーの森での経験でした。人類と自然を切り離さない「自然(じねん)」的思考に関する自信の解釈は、日本文化特有のものでもないのでは、と感じ始めたのがすごく大きくて。素足や裸で森を巡ること、拾ったベリーや川の水が直ちに食料になること、ノルウェーの人々の語る森の存在……。「え、これ、日本人だけの特別なやつじゃないの!?」と、それまで日本語の本だけ読んで日本人の意見だけを学んでいた視野の狭かった自分にはまさに、目から鱗。
このように、他者の文化を通して自国の文化を疑うというのは、人類学のたくさんの醍醐味のひとつです。そんなきっかけで学び始めた人類学は、今生きている人々の人生を通して問答し、価値観を疑うような、現代版の哲学のような学問。この分野において、植民地時代の人類学の利用という複雑な歴史を抱えながらも、やはりそれでも人類学のメッカであるイギリス以外、留学先には考えられませんでした。

今年200周年となるUCLのメインキャンパスにて、奥の建物はライブラリー
留学を決めて以降のプロセス
そんな北欧の旅を終えて1週間後、クライアントさんに担当プロジェクトや仕事時間の縮小を相談し始めました。英語の猛勉強もここからスタート。北欧では、彼らの話すことの一部しか自分では理解できず、常にGoogle翻訳に頼っていました。このままの英語力では、現地の授業についていくどころか、合格すら厳しい。そのため、まずはオンライン英語学習を1年間、そして3ヶ月のイギリスの語学学校にも通いました。その間、StudyIn(旧SI-UK)のサポートを受けながらUCLのインターナショナル・プレマスターコース(IPM)へも申し込み。最初は別のエージェントを利用していましたが、費用に見合うサポートが得られず、こちらに相談することにしました。
担当のカウンセラーの方は親身にサポートしてくれて、プレマスターというコースの存在についてもそこで知りました。プレマスターのことをイギリス留学経験者の友人に話したところ、「いきなり大学院に行くと、一年あっという間で、英語に慣れてきた頃にはもう終わっちゃうからね」と言われ、それも大きな後押しに。カウンセラーの方に、まずはとにかくIPM基準のIELTSスコアが取れるかトライしてみることを勧められ、それから彼女と一緒に志望大学も絞り込み。
プレマスターの最終候補はUCLとロンドン大学ゴールドスミス(Goldsmiths, University of London)。ゴールドスミスにも早々に合格をいただきましたが、当時、世界大学ランキング9位のUCLに挑戦できるチャンスがあるならと、より高い壁に挑戦したいと思いました。UCLへの出願プロセスは、当時の英語力の非常に低い私にとってはタフなものでしたが、カウンセラーの方が大学からのメールのほとんどを対応してくださり助かりました。当時の私は、それらのメールにどう対応していいかわからずにいたので。

英語の勉強と出願プロセスを並行して行う日々
StudyInは、日本で唯一のUCL公認エージェントパートナーです。UCLの教職員や卒業生との定期的なイベント、公式のトレーニングを通じて常に最新の情報を把握しています。そのため、学生の皆さまが自信を持って出願できるよう徹底したサポートを提供しています。
修士課程前にIPMを受講した理由とクラスの様子について
UCLのインターナショナル・プレマスターコース(IPM)を受講していなかったら、私の英語力では仮に大学院に合格できても授業についていけず、学費を無駄にしてしまっていたのではと思います。というのも、今大学院に通いながらの体感としては、もしIPMがなかったら、まともに授業についていくまでに6ヶ月はかかっていたのではという感じなので。
IPMは語学学校のような文法や単語を学ぶ場所ではまるでなく、大学院への第一歩という感じ。哲学やクリティカルシンキングなどのイギリス教育の基礎知識を固めながら、そのプロセスでアカデミックな英語を自然と鍛えていくような感覚です。ここで得た知識が、修士課程で割と、役に立つんです。英語に自信がない方はもちろん、イギリスの大学の教育スタイルに馴染みがない方には、IPMを受講して事前に授業のスタイルに慣れておくことをお勧めできます。
UCLでのIPMは雰囲気がとても良かったです。質の高い大学は世界各国から優秀な学生が集まるのでどこも同様だと思いますが。月曜〜金曜の授業に加えて、大量の課題が出され、先生方もなかなか厳格。授業自体は2時間ですが、それ以上に莫大な予習と復習、そして課題に追われていました。
さらに、そのあとには1時間のグループ学習が設けられていたり、1日少なくとも6時間は猛勉強。IPMではさまざまな分野の学生たちが集まって授業を受けます。心理学者やアート教師、弁護士、エンジニアなど、多様なバックグラウンドのクラスメイトに出会えるというのは、後の専門的な大学院では得られない楽しい一面のひとつです。

IPMでの日々 大学のファシリティを他の学生と全く同じように利用できる
学費と生活費の実状と、大学院(修士課程)について
私はこの2年間いまも変わらず仕事を続けているので、今のところ、奨学金には頼らず自分で生活できています。日本とは時差があるので毎朝早起きをし、朝7〜10時の間で打ち合わせ、その後大学の講義に行くという生活。楽なものではありませんが、大好きな仕事を続けながら学生に戻れるこの生活が、自分にはあっていると思います。
そんな大学院生活は本当に楽しいです。日々新しいことの連続で、昨日よりも今日、今日よりも明日、という感じで、日々確かな成長を感じています。たとえば最近学んでいる、マルチ・スピーシーズエスノグラフィ (multi-species ethnography)という新たな理論について学んでいきます。人類学ってもはや、人類が怪我対象ではないんですよね。そこでは「川に自由はあるか」「樹木は社会を形成できるか」というような、留学前は考えたこともなかった議論が飛び交います。
他の科目でいうと、医療人類学も非常に興味深いです。妊娠や出産と社会の関係を考えたり、生きることと死ぬことの人類学や、鬱やケアのエスノグラフィなど。入学前には想像もしていなかった事実に出合い驚く日々です。

大学院での講義の様子
ロンドンの暮らしと今後の将来像
日本人にとってはロンドンは比較的、暮らしやすいのではないでしょうか。他の欧米諸国と比べると、日本人の気質と似た部分が多いように感じます。たとえば、イギリス人も直接的な表現を避け、常に礼儀正しくあろうとする方が多い印象で。他国と比べると、そこまで外交的ではなく、控えめに感じます。
生活費は確かに高いですが、スーパーの野菜は意外と安かったりと、自炊ができる方なら想像しているよりは何とかなるのではと。イギリスは、このままずっと暮らしたいなと日々感じるような心地の良い国です。卒業後は2年間のGraduate Visa(※2027年1月以降は18カ月間に変更予定)を申請予定。修士論文のテーマに関連したプロジェクトの立ち上げを構想しています。

海外に住むのが始めての日本人でも、比較的スムーズに文化に馴染めるロンドン
留学エージェントを勧める理由とは?
留学に関する困難は、今ならAIが疑問を解消してくれると思うかもしれませんが、もし英語に自信がない場合は、エージェントは今でも有用ではないかと思います。というのも、自分で100パーセント原文を理解していないと、AIに何か間違いがあったとしても、その間違いに気づくことすらできないので。
レシピを調べるとか、そういう日常的なAIの情報ミスならまあ別にいいと思うのですすが、受験って人生を変える大きなチャレンジなので、そこでのAIによるリスクは少し怖いなと。そんななか、StudyInのカウンセラーの方は、私にとって心強い存在で。とにかく大量の質問をしましたが、いつも安心感のある回答を下さることに驚かされました。
去年のIPM卒業後、なぜか大学院から最終オファーが届かなくて困った時があったのですが、サポート期間がとっくに終了していたにもかかわらず、メールをすると以前と変わらずすぐに質問に親身に答えてくださったのが記憶に新しいです。
まとめ
今回は、イギリスUCLで人類学の修士課程を学ぶ木本梨絵さんにインタビューし、現地からのリアルな様子を語っていただきました。
木本さんは社会に出てから留学を経験しているので、とくに学生時代に留学のタイミングを逃してしまった方や、社会人になった以降も留学に行くタイミングを悩んでいる方に、読んでいただきたい内容になっています。
また留学決意前のノルウェー旅行でも触れているように、当時は英語のスキルがほとんどなく、Google翻訳に頼っていたほどだったとのことです。
皆さんは、英語スキルが不安というだけで諦めてしまっていませんか?木本さんのように英語を一から学び直して、イギリスの名門大学院に進める可能性はゼロではありません。
このインタビュー記事を読んで、皆さんの気持ちが少しでも留学に傾いていただけたら幸いです。
木本梨絵さんのプロフィール

木本梨絵(きもと りえ)
クリエイティブディレクター
1992年生まれ。株式会社HARKEN代表。女子美術大学 非常勤講師。武蔵野美術大学を卒業後、現在University College London大学院(人類学・修士課程)に在籍中。学業と事業を往来しながらロンドンと東京を拠点に活動。フィールドワークを通じて、不可分な都市と自然の周縁を実践的に研究。旅・自然・日本文化に関わるさまざまな業態開発やブランド企画、アートディレクションを行う。グッドデザイン賞、iF Design Award、日本タイポグラフィ年鑑、ACC等受賞。
instagram @riekimoto